海賊版サイトのブロッキング NTTを訴えようとしたのはカドカワの川上氏 負けても構わず注意喚起
【海賊版サイト対策の「ブロッキング」について関係者の見方が分かれている】
海賊版サイトのブロッキング 判断する携帯3社で対応わかれる
漫画やアニメを作者たちから無断で公開する海賊版サイトへの対策「ブロッキング」について議論が続いている。
政府は4月13日に「漫画村」など悪質なサイトでは技術的に遮断するブロッキングを民間事業者が自主的に導入すべきだと発表した。
すると、ブロッキングは憲法が保障する「通信の秘密」を侵害する可能性があるとの批判の声が多く上がった。
政府発表後、ブロッキングの導入を判断する大手携帯3社の対応は別れた。
ソフトバンクの宮内謙社長は5月9日の決算会見で「著作権の侵害については放置できない。一方で、業界団体も連携して通信の秘密、運用面や技術面を考慮して何が実行可能か検討している」とブロッキングに慎重な姿勢を示した。
一方、NTTグループは4月23日に「短期的な緊急措置として、海賊版3サイトに対してブロッキングを行う」と発表。
NTTの鵜浦博夫社長は5月11日の決算説明会で「2017年秋、著作権者と出版社から『NTTを訴えていいか』と相談があった」と明かして物議をかもした。
NTTを訴えようとしたのはカドカワの川上氏 負けても構わず注意喚起
誰がNTTを訴えようとしたのか。
日経xTECHは5月16日に「カドカワ川上量生社長が語る、サイトブロッキングの必要性」と報じた。
インタビューでカドカワの川上社長はNTTの鵜浦社長に「NTTを訴えさせてもらえないでしょうか」と持ちかけたと明らかにした。
川上氏は裁判でNTTに勝とうとしたのではない。
訴訟によりブロッキングの必要性について世論を喚起、海賊版サイトはブロッキング以外に有効な代替策が無いと判決文で示してもらうのが狙いだったという。
ブロッキングが通信の秘密を害するとして「他にどんな現実的な対応策があるのか」との議論は今も続いている。
漫画村に対しては金儲けの源泉の広告出稿者に対しての批判が集中、4月17日にサイトが見えない状況になった。
電子書籍事業を営む上場企業の決算を見ると、例えばイーブックの電子書籍配信の売上高は以下のようになっている。
【イーブックの電子書籍配信(スマホ)の売上高の推移】
2017年4〜6月期:974億円
2017年7〜9月期:1031億円
2017年10〜12月期:1016億円
2018年4〜6月期:916億円
漫画村が社会に与えた経済損失、著作権者たちの被害総額は1000億円以上とも言われる。
結果的に漫画村が見れなくなったことで、電子書籍事業がどうなっていくのか。
2018年4月以降の電子書籍を営む企業業績には投資家以外からの注目も集まっている。
・この記事の関連リンク
日経xTECH:カドカワ川上量生社長が語る、サイトブロッキングの必要性
NTTグループ:インターネット上の海賊版サイトに対するブロッキングの実施について