東芝、米原子力会社の買収で7000億円の損失可能性 買収で大規模なミス?

東芝、米原子力関連で数千億円規模の損失計上か

会計不祥事から立ち直ろうとしている東芝に再び危機に陥った。

東芝の米子会社の原子力会社ウエスチングハウス(WH)が2015年に買収したのが米原子力サービス会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)だ。

東芝は2016年末にS&W社の買収に関連して数千億円規模の損失が発生する可能性があると発表した。

今後の影響を懸念して東芝の株価は急落、1月中旬の報道では東芝の損失額は5000億円規模の可能性もあるという。

東芝は1月24日、2016年4〜12月期の決算を2月14日に発表すると公表、CB&I社の損失計上も明らかにする方針だ。

東芝、米原子力会社の買収に伴い数千億円の損失の可能性、ニュース目次

・東芝、米原発事業で損失7000億円の可能性(2017年1月19日)
・東芝、米原子力会社の買収で数千億円の損失計上か(2016年12月27日)
・東芝のS&W社の買収、のれん減損って何?(2016年12月27日)
・東芝「見積もりコストが当初想定より大きいことが判明」(2016年12月27日)
・東芝が債務超過になって資本増強も?(2016年12月27日)
・時価総額は2兆円から1兆円に半減、シャープに抜かれる。大物投資家も参加(2016年12月29日)
・米WH社が原子炉を供給するボーグル原子力発電所の建設工事は難航(2016年末)
・本記事のwiki的なことば解説

東芝、米原発事業で損失7000億円超の可能性

【ニュース】
1月19日付の日経新聞が以下のように報じた

 東芝の米原子力事業で発生する損失が、最大で5000億円を超える可能性が出てきた。
2017年3月期の連結決算に反映する損失額は算定中だが、最終赤字は避けられない。
自己資本が大きく毀損する見通しとなり、東芝は日本政策投資銀行に資本支援を要請した

1月19日の昼ごろ、共同通信や日経新聞が損失は最大で7000億円規模にもなると報じた。

「減損の金額が大きすぎじゃないですか。もう完全に理解できませんよ」

「2015年末に買収した企業ののれんを2017年初に減損するというのは一般的にはありえない状況だね。例えば、2016年内に事業の存続を揺るがすような災害が起きたならばわかるのだが」

「従来の2017年3月期の見通しが1450億円の黒字で、これに最終赤字7000億円を加味すると5550億円の最終赤字じゃないですか。東芝の純資産は3600億円だから、債務超過になりますよ」

「単純計算ではそうなるね。もっとも、追加コストが5000億円、もしくは円安で拡大して7000億円と報道されているが、東芝の連結決算でそのうちのどれだけの金額を反映するのかはわからない」

「買収して1年でのれん減損するのだけでもおかしいやろ。買収した時の企業価値の算定とかどーなっとるんや」

「買収の際の企業価値について東芝は相手方と交渉中だ。法的に決着した後に最終的な金額が確定する。300億円で買収した会社で1年後に7000億円の赤字を出すのであれば、取締役は職務に重大な過失があったか法的な面でも問われるだろう」

東芝、米原子力会社の買収で数千億円の損失計上か 買収で大規模なミス?

【ニュース】
東芝は27日、2017年3月期に米国子会社の買収に関連して数千億円規模の損失を計上する可能性があると発表した。

東芝の米子会社の原子力会社ウエスチングハウス(WH)が2015年に買収した米原子力サービス会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)の価値が想定を下回るため。

アメリカの証券取引委員会に提出された資料によると、東芝子会社の米WHが米S&Wを買収した価格は2億2900万ドルで、約270億円。

270億円の買収で数千億円規模の損失を計上するのは、資産より負債がはるかに大きい債務超過の会社を買収してしまった可能性がある。




「東芝のニュースはもう、何がなんだかわからないですよ。東芝のアメリカの子会社がアメリカの原発事業を買収して大失敗したんですか?」


「簡単に言えば、東芝は見積もりの甘い買収をしてしまったのだろう。話は複雑だから、2017年の1月下旬か2月初旬の2016年4〜12月期の決算での正式発表を待つしかないね」


「そんなことを言っても、東芝の株価は12月27日時点で大幅下落ですよ。何が起きているんですか?」

「そうだね。では、東芝が2016年8月12日の第1四半期決算で発表した決算資料を見てみようか」

東芝のS&W社の買収、のれん減損って何?


東芝の2016年度第1四半期決算資料より)

「えーっと、まずは東芝(米WH)が買収した米S&W社の会社の価値は、契約時点では11億7400万ドル(約1300億円)だったんですよね」
「でも、買収契約の後に第三者会計士が米S&W社の価値を調べたらマイナス9億7700万ドル(約1100億円)だった。こんなのあるんですか?」


「買収契約後に米S&W社が大きな損失を出したとすればおかしな話ではないね。原子力は日本の東日本大震災による福島原発の事件から安全性が世界で疑われている」
「さらに、アメリカではシェールガスを使った火力発電が急速に普及、原発のコストが相対的に高くなっているんだ」


「それにしたって、東芝が12月27日発表した数千億円規模の損失計上の可能性っておかしくないですか?」


「2016年末時点では妄想しかできないね。ただ、東芝グループが買収した企業価値の算定を失敗した可能性は高い」
「東芝の決算資料にある通り、第三者会計士が算定した価格で東芝グループと買収相手が合意できれば『価格調整手続』で東芝は大きな損失は防げるはずだった。今後、どうなるかは様子を見守るしかないね」



東芝「見積もりコストが当初想定より大きいことが判明」

【ニュース】
東芝は27日、米S&W社の買収について記者会見を開いた。

原子力事業担当の畠沢守執行役常務は「買収完了時点ではのれんが105億円と見積もっていたが、その後にプロジェクト完成にかかる見積もりコストが当初想定より大きいことが判明した」などと話した。




「当初想定より金額がズレすぎですよね。300億円で買った会社が、数千億円のマイナスの価値しかなかったなんて」


「そもそも米S&W社を買収したのは東芝の原子力子会社の米WH社だ。誰に問題があったのか、東芝グループ全体としてどこに問題があるのかを見つけるのには時間がかかりそうだ」


「このままじゃ、今回の案件が不適切会計なのか、経営陣の判断ミスなのか、なんにもわからないです」


「正直に言って、続報を待つしかないね」

東芝が債務超過になって資本増強も?

【ニュース】
東芝は27日、米S&W社の数千億円規模の損失可能性についての記者会見を開いた。

東芝の2016年9月末の株主資本は3632億円だ。

東芝は2016年末時点で、2017年3月期の最終損益の見通しは1450億円の黒字(前期は4600億円の赤字)だ。

東芝の財務体質についての懸念が広がっている中、綱川智社長は「資本増強を検討している」と述べた。




「東芝は大丈夫なんですか?債務超過にならないんですか?」


「これから数ヶ月後の財務状況は予断を許さない。買収交渉の金額確定だけでなく、本業での収益や為替の変動も影響する」


「東芝が債務超過になったら大騒ぎになりますよ」


「2016年9月末時点で東芝の株主資本は3632億円ある。2017年3月末の最終利益の見通しは1450億円だ。単純計算では、米S&W社の買収による見積もり間違いが5000億円超ならば債務超過になる」


「それだったら見積もりを間違えすぎやろ」

時価総額は2兆円から1兆円に半減、シャープに抜かれる。大物投資家も参加

【ニュース】
東芝のS&W社の大規模な減損の可能性の報道、会社の公式発表を受けて株式市場では東芝の株価は暴落。

12月19日に1兆9624億円あった時価総額は12月29日には1兆962億円まで下がり、一気に2兆円から1兆円規模の会社になった。

28日には業績回復の期待のあるシャープの株価は東芝の株価を2009年6月以来、約7年半ぶりに逆転した。

株式市場では大物の個人投資家cis氏も東芝株の売買に参加した。

「東芝株の暴落っぷりはすごいですね」


「東芝は2015年からの会計不祥事で株価は急落した後、半導体が好調で業績見通しの上方修正を繰り返して株価が上昇していた。東芝再生の期待の最中での大規模な減損の可能性の発表だけに、利益確定売りや失望売り、空売りなどが集まったね」


「29日の東芝株の売買高は売買高は6億3875万株でかつてない規模だったみたいね。個人投資家も機関投資家もみんなが売買したのかしら」


「この規模になると個人、機関投資家、外国人とフル参戦だろう」


「大物のcisさんも参戦したみたいやで。29日にツイッターで『東芝250から買い始めて260でファイナル200万株一発注文買い増ししてみた』ってゆーとった」



米WH社が原子炉を供給するボーグル原子力発電所の建設工事は難航

【ニュース】
東芝子会社の米WH社が原子炉を供給するボーグル原子力発電所(米ジョージア州オーガスタ近郊)3、4号機の建設工事が難航している。

東芝は2012年2月10日、米原子力規制委員会(NRC)が、ボーグル原発3、4号機の建設、運転を承認したと発表した。

米国での原子力発電所の新設は1978年以来、34年ぶりだ。

同原発はウエスチングハウスの最新型の加圧水型原子炉「AP1000」を採用する。

その後、自然災害やテロへの対応強化などのために米原発工事の安全・品質基準の厳格化が進み、当初想定から建設工事が遅れている。

工期の遅れがコスト増につながり、東芝にとって今後の重荷になりそうだ。


「アメリカでの原発の建設工事が伸ばし伸ばしになっているんですね」


「原発を取り巻く環境は急激に変わっている。東日本大震災やテロによる安全性への疑問、シェールガスの普及による必要性の低下など今後も予測はつかないね」


「東芝の子会社の米WH社はなんでこんなにコストがかかりそうな会社を買っちゃったんでしょう?」


「東芝は不適切会計の影響で原発事業に注力、子会社の米WH社が原発関連工事を手がけるS&W社を買収することで採算改善を図ろうとしたのだろう」
「2015年末に300億円で買った会社が2016年末には数千億円の損失になるという話だ。経営陣は株主に説明する責任がある。今後の会社の発表を待ちたいね」

本記事のwiki的なことば解説

・CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)社とは
CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)社とは米国大手エンジニアリング会社CB&Iの子会社。

S&W社は原子力の建設と統合的なサービスを手がける。

東芝の子会社の原子力会社ウエスチングハウス(WH)が2015年12月31日買収を完了して東芝グループに入った。

東芝の米子会社のWH社は、米S&W社の買収により米国での原発建設プロジェクトの一元的な管理を目指した。

ただ、石油の供給能力の向上やシェールガスの発展、日本の東日本大震災で起きた原発の安定さへの疑問などで原子力事業を不安視する声は世界に広がっている。



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