ソフトバンク、営業利益27%増の1.3兆円 孫正義会長の会見 ほぼ全文
【ソフトバンクの2018年3月期の決算】
ソフトバンク、営業利益27%増の1.3兆円 孫正義会長の会見 ほぼ全文
世界から見ても特殊な企業のソフトバンクは5月9日、2018年3月期の決算を発表した。
売上高は前期比3%増の9兆1587億円、営業利益は27%増の1兆3038億円だった。
10兆円ファンドと言われるソフトバンクビジョンファンドからの営業利益が3029億円と貢献した。
一方、将来のアリババ株の売却に関する一時的なデリバティブ損失の影響もあり、純利益は27%減の1兆389億円だった。
ソフトバンクは単なる日本の携帯会社ではなくなっている。
米子会社のスプリントや持分法適用関連会社の中国のアリババ、10兆円ファンドも含む巨大な投資会社であり、短期的な損益で業績の判断は難しい。
孫正義会長は5月9日16時30分より決算会見を開いた。
会見内容をリアルタイムで更新、ほぼ全文を記載した。
孫正義会長、冒頭説明の要旨
【ソフトバンクは全てのファンドを連結する(補足資料より)】
〜冒頭説明〜
ソフトバンクは何の会社なのか。
通信会社か投資会社か、10年、20年先、どうするのか。
そんな質問をよく受けるので、もう一度、我々の群戦略に触れてみたい。
なぜスプリントとTモバイルの合併に合意したのか。
国内で通信のソフトバンクKKを上場させようとしているのか。
理解が深まるのではないか。
群戦略はソフトバンクが300年成長し続けるためのもの。
ソフトバンクの長い歴史で言えば、通信事業は一時的に意味合いが強かった。
創業から群戦略、戦略的持ち株会社で行くのは考えていた。
ビジョンファンドがこの1年間で3000億円の利益に貢献した。
ビジョンファンドを初めて1年経つが、月を追うにつれ自信は深まっている。
一部の報道は純利益27%減と言っている。
ただ、去年の純利益にはアリババの売却益8000億円があった。
今年には会計上のアリババのデリバティブ損が4000億円あるが、これは期ズレで一時的なもの。
一時的要因を除け純利益は2389億円から7788億円の226%増で大きな増益だったのではないか。
判断はみなさんがすればいいが、私は実態を解説する。
会計ではアリババの株が上がると損が出るが、来年の6月には一時的な損が全額繰り戻しになり、全てデリバティブ益として計上されるのが確定している。
さらに売却益が5100億円出てくるため、来年は一時的な益が1.2兆円出てくる。
ソフトバンクと言えば借金王と言われる。
有利子負債を調整後EBITDAで割った倍率は2.6倍だが、通信会社の4〜5倍までは健全という範囲内に収まっている。
投資会社として見れば、保有する資産に対して借り入れが5割を切って入れば大丈夫だが内部的には35%未満にしようとしている。
保有株式時価22.9兆円を純有利子負債6.7兆円で割った数字は29%に抑えている。
スプリントとTモバイルの合併で支払利息は半減以下になる。
人によっては、またハゲが適当なことを言ってるというかもしれないが。
ビジョンファンドが世界中のユニコーンに投資している。
それが日本に上陸してジョイントベンチャーを作る。
日本にヤフージャパンを作るとき、ソフトバンクとアメリカのヤフーが作った。
ヤフージャパンは本体の企業価値も超えた。
同じように、世界中のトップ企業を日本に持ってくる。
30数社、日本のソフトバンクKKとヤフージャパンがジョイントベンチャーの受け皿になる。
この2社はビジョンファンドのおかげで成長戦略が上乗せされる。
例えばウィーワークジャパン、2拠点は即完売。
プレンティジャパン、ディディジャパン、ボストンダイナミクスも準備中。
スプリントは119年の歴史で最高の営業利益(2900億円)、純利益は過去11年で初の黒字。
スプリント買収時は7ドルで今は5ドルで損したと言われる。
実際は円で借り入れをして、円で返さなきゃいけない。
円換算でみると2兆円で借り入れたが、今は2.2兆円になっている。
株式価値は3800億円から5300億円で増えている。
これから合併シナジーが出てくるため、さらに増えると思っている。
Tモバイルとは一度、破断になった。
何を妥協したのか。
経営権を対等に持ちたいというのを妥協した。
あれほど経営権にこだわっていた、なのに半年で舌の根も乾かぬうちに変異をした、そう恥ずかしい思いもわかった上で飲み込む。
長い意味の勝ちを取れるのであれば一時的な退却は恥ではない、あえて非難を受けても構わない。
根本的な戦略は群戦略であり、その組織論からすれば正しい判断だと思っている。
シナジー効果は5兆円弱ある、ネットワーク、セールス、バックオフィスを足して。
場合によってはアメリカでナンバーワンの会社も見えてくる。
最初はTモバイルを買収して、30%のプレミアムを払おうとしていた。
今回はプレミアムをもらう側。
経済的な面は悪いものではない。
一部もらって一部払う、トータルで見れば誤差の範囲だ。
アームはみなさんのスマホ、携帯電話のチップのマーケットシェアがほぼ100%の会社。
重要な商品で世界マーケットシェアが100%の会社は何社あるのか。
1社で世界中の塩を独占していれば巨大な価値を持つ会社だ。
しかも、くだらない小さな商品ではなく、なくてはならない製品になったスマホや携帯のチップのほぼ100%のアームがソフトバンクの傘下に入った。
1兆個のIoTのチップに、機械学習を実装可能にするプロジェクト・トリリオン。
アームは非上場化してエンジニアを一気に増やしている。
7年後ぐらいにもう一度、上場させる。
そのときは生まれ変わったほどに高収益、役割が広くなり深くなる、そういう先行投資をしている。
アリババのフリーキャッシュフローは1.7兆円で44%増だった。
ビジョンファンドは非常にうまくいっており、いくつか紹介する。
ウィーワークは年平均成長率が129%。
インドナンバー1Eマースのフリップカートはアメリカのウォルマートに売却した。
投資して半年で、2.5ビリオンが4ビリオンになった。
去年の実績に入っていないが大きな実績になった。
ペイTM、オヨ、オートワン、コンパス、インプロバブル。
ものすごい勢いで増えている。
ビジョンファンド、私自身の今までのIRR44%の実績、それを上回るペースで推移している。
これから大きくなるのがライドシェア。
業界地図を大きく変えるインパクトを持っている。
既にお客さんの運賃で7兆円規模の市場、みんな我々のグループにある。
それが年平均108%増で伸びている。
1日あたり3500万回を超えている、年率倍々ゲームで伸びている。
3月末にサウジで世界最大のソーラープロジェクトを始めた。
200GW、原発に直すと200機相当。
それがサウジ1カ国で発電量を持つ重要なプロジェクト。
以上が私の説明。
孫正義会長、決算会見の質疑応答
ーー国内携帯で楽天が参入してくるが
「三木谷さんは優れた事業家と高く評価している。やる以上は成果を出すし準備もしているだろう。情報革命はいろんな人が役割を果たす、そのうちの重要な一人で健闘を祈る。当然、私たちはライバルなのでソフトバンク側も他の2社も含めて切磋琢磨する」
「値段について、日本の通信料金はアメリカと比べて安い。アメリカのベライゾン、AT&Tは高く、ネットワークは弱い。日本はそれよりも良いサービスを安く提供しているのは事実。我々が携帯に参入しているときは一人当たり1万円、2万円だった。パケットをつなげれられる状況もはるかに小かかった」
「ホワイトプランなど導入、アメリカに比べて安くなったのは我々が仕掛けた競争の成果だと思っている。日本のガラケー全盛の時代、我々がiPhoneでスマホの普及率をあげた」
「新しく楽天が競争を仕掛けてくるのは刺激があって良いのではないか。負けないように頑張る。余裕のある発現に聞こえるかな」
ーーアメリカの合併で前回が破断、今回は合併で気持ちの変化は
「一言で言えば群戦略。それが鮮明になった。ビジョンファンドが素晴らしい立ち上がり。私の関心がより群戦略に移ったのが重要。もう一つは合併でのシナジー、戦いのポジションが大きなものがある。その大きな成果の前に小さな妥協はあってもいいのではないかと呑み込んだ」
「恥とかプライドを呑み込んで、大きな成果のためにはいいのではないかと思った。ここでコメントできるのは以上の2つ」
ーーいつ判断したのか
「この1、2ヶ月。きっかけは私が大人になったこと」
ーースプリント合併のこれまでの判断は、取締役会の総意だったのでは
「アメリカが最も重要市場というのはみんな変わっていない。今回、一株も売却していない。一方、経営のコントロール権で対等かそれに近いところにこだわって交渉していた。今回は取締役会の全員一致で名を取るより身を取ろうと合意した」
ーースプリントのようにソフトバンクKKを売却する可能性もあるのではないか
「それは絶対にない。ソフトバンクは日本で上場、限られた地域の中では造詣が深くて組織としても強みを持っている。この日本でビジョンファンドのジョイントベンチャーを着地させる場所、重要なこだわりを持っている。日本の通信のソフトバンクKKを独立採算させるが、中核的企業であるとは変わらない」
(社内から紙が渡される)
「さきほどのフリップカートのウォルマート売却は現時点では発表されていない、と。言っちゃいましたね」
ーー買収先にメディアもあるが
「地方新聞の買収に関心があるのかということだが、ソフトバンクとして直接的な関心は全くない。フォートレスが持っているたまたま一つが地方のローカル紙を束ねている会社があった。その会社の事業の拡大を止めるわけにはいかない。どのぐらいやるのか、今やっている事業の延長としてどうかは知らない。ソフトバンクグループとして新たにやろうとは思っていない」
ーーライドシェアでウーバーとディディなど競合の株を持っているが
「ビジョンファンドのパートナーのサウジが既にウーバーの株式を5%前後、持っていた。競合の可能性のある投資は彼らの事前の承認が必要との契約があった。一方、ビジョンファンドとしてウーバーに新たに15%投資をする、サウジ側も含めて合意を得た。ビジョンファンドがウーバーと競合するのでなく、筆頭株主として入る」
「それがあれば、ソフトバンクがビジョンファンドとわけてデルタファンドとしてディディ、オーラ、クラブを持っていたのをまとめて移してもいいのではないか、そのほうがコンフリクトがないのではないかというサウジとの話し合い。それが基本的には合意している」
ーーコンテンツを通信の上にやる会社は多いと思うが、そこに関心はないのか
「コンテンツはヤフージャパンとしてやる、ソフトバンクKKが若干やることはある。ビジョンファンドがコンテンツで大掛かりに狙っている者はいま現在はない。将来はなんでもあるが、きょう現在は僕がそこに関心があまりない。非常に良い条件でチャンスがやってくれば考える」
「AIとIoT、スマートロボティクスが情報革命の中心だと思っている。コンテンツはあまりにばらけている、細切れになっているところの一つをやっても大した強みにならない。それが世界的に大きな意味合いを持つのであれば、ということ」
ーー海賊版についてのサイトブロックについて
ソフトバンクKKの宮内社長「著作権の侵害については放置できない。一方で、業界団体も連携して通信の秘密、運用面や技術面を考慮して何が実行可能か検討している。NTTはブロックすると発表したが、こちらも検討しているが、両方の議論があり線引きが難しい。国としても法案化するか、動きがあると思いそれに対応していきたい」
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ソフトバンク:決算短信
ソフトバンク:SoftBank Vision Fund 会計処理・開示 補足資料