トヨタ、純利益2.5兆円で過去最高 豊田章男社長の会見、ほぼ全文

【トヨタの2018年3月期の実績と2019月期の業績見通し】

トヨタ、純利益2.5兆円で過去最高 豊田章男社長の会見、ほぼ全文

日本最強企業のトヨタが5月9日に力強い決算を発表した。

2018年3月期の売上高は前期比6%増の29兆3795億円、営業利益は20%増の2兆3998億円、純利益は36%増の2兆4939億円と過去最高だった。

日本や海外など世界での自動車販売台数は896万4000台と前年同期比0.1%減少だったもののコスト削減や為替の円安、米国の法人税減税が追い風になった。

2019年3月期の売上高は1%減の29兆円、営業利益は4%減の2兆3000億円、純利益は15%減の2兆1200億円を見込む。

トヨタは5月9日の13時30分から決算会見、14時30分から豊田章男社長が経営方針を説明した。

豊田社長は「原価低減とTPS(トヨタ生産方式)」が大事だと何度も力説した。

豊田章男社長の会見内容をリアルタイムで更新、ほぼ全文を記載した。




トヨタ決算、冒頭説明の要旨「米国は問題になっている、インセンティブの出し方を変える」

【トヨタは北米での利益が落ち込み、欧州では回復した(決算発表資料)】

説明者は白柳専務、小林副社長。

米国「販売奨励金が増え、問題になっている。NAFTAはまだ見通しも立っていない。目指すは2020年に営業利益率を8%に」

米国の販売奨励金「今年並みのインセンティブは出すが、月次や3カ月ごと、車種ごとなど出し方を変える」

研究開発費「従来と変わらず3%、新ビジネスの投資は(そのうちの比率が)35(%)。歯止めをかけないと膨らむ一方なので現行の研究開発日を絞り込み、グループ会社で合従連衡しながらやっていく」

決算発表会を今回から二部にしたのは「社長は思いを語りたい」のと「決算の中身も説明したい」ため。

今回からの場中決算の理由は「会見を二部制にすると遅くなり、マスコミが本社とやりとりする時間もあるため自動的になった」と説明、投資家への意識は触れず。




豊田章男社長、冒頭説明で経営方針を語る

〜冒頭説明〜

昨年は2期連続で営業減益を発表、連敗はしてはいけないと述べた。

原価主義より原価低減。

原価に適正利潤をのせて販売するのではなく、利潤は市場が決める。

我々にできることは原価を削減すること、徹底的に無駄を排除する。

あらゆる職場で固定費の抜本的改革、地道な原価低減に取り組み始めた。

技術分野ではTNGAが二巡目に入ってきた。

連敗だけは絶対にしないという決意のもと、全社員が地道に泥臭く頑張った結果が決算数値に表れてきた。

絶え間ぬ改善というトヨタらしさが現れ始めた決算。

自動車産業は100年に一度の大変革、ライバルもルールも変わっている。

新たなライバルのテクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピードで積極的な投資をしている。

原価低減の力に磨きをつけて稼ぐ力を強化し、新分野への投資を拡大する。

グループのアライアンスは資本の拡大を求めるのではなく、思いを共有するパートナーとより良いモビリティー社会を作る。

大事なのは誰よりも早くではなく、全ての人がより自由に安全に活動できる社会を目指す。

電動化、自動化などが進むほどトヨタの強みが生かされていくと考えている。

必要とされるサービスを必要なだけ提供する世界であり、ジャストインタイムの世界がやってくる。

ジャストインサービスの世界では、全てが無駄のないリーンなオペレーションで繋がる必要がある。

トヨタの強みはTPSと原価低減。

この二つを徹底的に磨くのは未来を生き抜くためにこそ必要。

未知の世界で戦うための決意。

自動車を作る会社からモビリティーカンパニーになる決意をした。

移動に関するあらゆるサービスを提供すること。

自分たちの手で未来を切り開く選択をした。

100年に一度の大変革の時代をチャンスと捉える。

最も大きいのは1月に実施した役員体制の変更。

社長に就任してからの8年間はサーキットレースをしていたような気持ち。

お決まりのコースを早く走らせようとしていた。

成功企業を持つ巨大企業の変革の難しさを感じていた。

従来は4月の役員体制の変更を1月に変え、6人の副社長を中心とするマネジメントチームに変えた。

年齢、所属、性別、国籍に関係なくそれぞれの知見を経営に持ち込んで欲しいと考えた。

サーキットレースからラリーに変える発想。

変化に飛んだ道をいかに安全に走るか、ドライバーはコドライバーを信じて全開でアタックする。

お互いに命を預けあう信頼関係がなければ務まらない。

副社長や社外役員が社長目線でナビゲートしながらゴールを目指す体制に変えた。

これからのトヨタの変化に期待して欲しい。

豊田喜一郎の時代に似ている。

継承者こそ挑戦者でなければならない。

うまくいかないことも多いだろうがご支援いただきたい。




豊田章男社長、質疑応答「トヨタらしさ、浮かんできたのが原価低減とTPSだった」

〜トヨタの最近の動きを動画で説明、その後に質疑応答〜

ーー2018年3月期の業績評価
「第3Qの時、小林副社長がバツとあった。テレビで見ていたが『バツはないんじゃない』と思っていた。1月から小林さん含めた体制で毎日、いろいろやり始めた。いろんな課題が見えてきて、やっぱりバツだったかなと思ってきた」
「我々は毎回のクオーターでも、年度でも持続的成長、正しい情報を伝えようと思ってきた。仕事のやり方が変わりつつあると思って欲しい。そう気づかせてもらった決算になったのではないか」
「社長をやって8年になる。最初の4年は赤字でタスキをもらい、品質問題、東日本やタイの洪水なぢ自然災害。振り返ると、それがあったおかげで私自身の求心力があがった。副社長から社長になるための脱皮ができる良い環境を頂いたと思っている」
「最初の4年間は、振り返るとこの会社にとって良い四年間だったと思う。85円でどんな経済環境がおこり、750万の生産台数でも赤字にならない体質を作ろうと掲げた」
「2012年で達成したが、それから4年間、これから勝負だと。意思ある踊り場と。正直申し上げて、体質改善が進んだと思っていたが、最初の4年間のダイエットは体重が下がっていただけで筋肉のない脂肪が残っただけだった」
「これからの期は筋肉質に変えて、さらに新しい勝負ができる体質にできたのが2018年3月期の決算だったんじゃないか」
「トヨタらしさ、浮かんできたのが原価低減とTPSだった」

ーー中長期のスパンでの台数成長についてどんな考え方か
「急激に伸びても、一気に落ちた時の影響がある。持続的に年輪のように積み重ねていく、それにこだわってきた。そのこだわりと中国を始めとした、より急激に伸びていく市場もある。年輪経営で体力も培ってきた。伸びる市場には伸びるなりのタイミング、リソースを投入して市場に遅れないようにシフトを変えていきたい」

ーーなんで原価低減とTPSか
「トヨタらしさを取り戻す戦い。社内外で戦うという言葉を使ってきた。社長は誰と戦っているのかとよく質問を受ける。悩んだ末、トヨタらしさを取り戻す戦いだと思っている。トヨタはBtoCのビジネス。先端技術をつけたからと言って、価格は市場が決めること。適正利潤を上乗せしても市場に受け止められるわけではない」
「原価低減、その思想。よりジャストインタイム。その二つが言い古された言葉だが、トヨタらしさを取り戻すエッセンス」
「私も62歳になった。8年前はお兄さんと言ってよ、という雰囲気もあった。62で本当のおやじかな。従業員は息子になってくる。息子たちにお父さん、これ欲しいから買ってよと言われてなんて答えるか。そのまま買う親父はいない。なんで欲しいんだ、どうして欲しいのか聞くのが普通の親父」
「今は安易にお父さんこれ買ってよと言ってくる風潮がある。予算さえ通ればいいんだ、会議さえ通ればいいんだという。何か欲しいなら、これをやめるからこれをやりたい。ここは稼いだのだから手伝ってよというやりとり」
「TPSはトヨタマンであれば何でも理解されると思われがち。ホワイトカラー職場を中心にそうではない。トヨタ生産方式という名前で、なんとなく生産現場のもの、そういう発想が社内にはびこっているのが反省。ジャストインタイムとは自動化とは、それを腹で理解する必要があるんじゃないか」

ーー1月に役員を変更、その変化について
寺師取締役「アライアンスの一番の効果は相場観、経営資源の使い方が大きくかけ離れていた。比べていくと行き着くのは無駄をなくす。原点に変えるのが一番やるべきこと。会議を半分に、週報をなくす、当たり前をゼロから始める。外から来た人の声は目から鱗。自分の相場観が曇っていた」

小林副社長「意思決定は劇的に変わっている。グループ会社が社長同士で打ち合わせすると膨大な資料、国会答弁のようになる。新しいやり方は資料なし。先方の悩みを箇条書きで4条、それを午後から展開。役員会議で異常なければ話す必要なし」
「上司と部下の関係。部下が余分な資料を作らなくてよいので自分の時間を作られるようになった。原価の見方、クレームがあるとドンドン高くなる。それを車両目線で見る。すると原価低減する要素はいくらでもある」

豊田社長「1月から6人の副社長をもじって、7人の侍と呼んでいる。象に例えると、足を専門的に見ている人、鼻ばっかり見ている人。専門家だが、象を動かしているのは社長だった。みんなで象を動かす感覚になっていなかった」
「各機能を副社長が見てもらうとか、毎週一回必ず懸念事項を話す。偉そうな言い方をすれば戦略会議かな。かつては一人で象を動かしていたが、7人の象使いに。コドライバーはドライバーが見えない時に誘導する役割。その関係のごとく象を動かし始めた」




ーー企業文化で何を守り変えていかなければいかないと思うか
「この8年間悩んできて、一番抵抗だったのは過去の成功体験。世の中が変化していく時に過去の成功体験が抵抗してくる。なんで変える必要があるの、何がおかしいのというところから始まってしまう。世の中変わってくる時に準備ができているだろうか。今もコミュニケーションのやり方に悩んでいるのは確か」
「自動車業界は100年に一度の大変革、自動運転、電動化。過去の経験が役に立たない、新しい競争相手。何を守り変えていくのか。ソリューションはないが拘りはある。競争相手は自動車を作ってこなかったテクノロジーカンパニー。自動車出身だけに、自動運転になろうがシェアリングが進もうが、車には愛がつくものにしていきたい。それは絶対にこだわっていきたい」
「トヨタが選ばれる存在になっていきたい、守っていくのかこだわりかはわからないが」

ーー危機感、危機意識が浸透しない苛立ちもあるのでは、社内外にどうやってメッセージを伝えていくのか
寺師取締役「成功体験、1000万台まできました。600万台あたりを超えた時から難しくなってきたなと。右肩上がりで従来のオペレーションでやってこれた、変数が少ない時のビジネス。従来の方程式の解き方でいけるのじゃないか。まだやれる、世界は変わっているのにまだやれる。やり方を変えようという人のどっちも解がなかった」
「会社が大きくなることで調整が増えて、従来の効率で仕事ができない。この延長線上には解決策がないと説明している」

豊田社長「危機意識という感覚では持っていない。そういう風に行動してしまうのは、社長になってすぐ品質問題に直面した。アメリカの公聴会に出席した。この会社の現在過去未来について説明した。晒され感が違うのかと思うが、私と社内ではギャップがあったのかと思う」
「1月からスタートした7人の侍で温度差はないと思っている。私だけ異常だったかな、公聴会に行ってないとわからないかな、とも思っていた。本部長以下はどうか、7人の思いとの差はある。もうちょっと7人の侍が現場に降りて行って仕組みを変えて、企業の進むべき方向を変えて、巡航スピードを変える、トップしかできない」
「今後は大きなうねりに変えていくか、これからの豊田に期待して欲しい」

ーー変革の次の大きな課題は
小林副社長「モビリティーカンパニーとは今までの発想では自動車でなくなっていく、車は人間に近づいていく。情報をとったり。課題は見えていないものが一杯ある。自動運転ひとつとってもバラバラ。新しい概念が出てくるかもしれない。競争相手、組む相手も含めて、人に対してサービスしていこうじゃないかと。ズバリ答えられない」

寺師取締役「10年前に自動運転が話題になるか、コネクテッドがこうなるかとは考えていない。でも、その時期に技術は始まっていた。今はいろんなところに技術の芽があるのが自動車に入っていく。そういうとこに追いつけじゃなく、早く手を打てるところに持っていきたい。何がこれから必要か、何があるかわからない事態にどれだけ早く動くかが課題」

ーー日本人でなく世界にいるトヨタマンに何をして欲しいか、日本のトヨタマンと違うか
「回答はシンプル。全てのステークホルダーに期待してるのはその町の一番の自動車会社になってくださいに尽きる。その町になれば、お客様の喜んでいる顔も見れる。それこそが得意芸、改善につながる。その町の自動車会社の一番になってもらうのが持続的成長につながる」
「確かに色んな言動は、日本の本社に言っている意味合いが強い。現場で起きているんだ、大本営が管理している会社じゃないと警笛を鳴らしているつもり。これからも行動で示していくつもり」

小林副社長「1月に社長は米国で、私が日本で挨拶。世界のトヨタマンはひとつである、初の試み。日本の社員は慌てている。徹底して世界で働くトヨタの社員が意識を持てば、世界で勝っていきたいという思いで進めている」

ーーTPSと原価低減を突き止めればイノベーションに対応できるのか、あと何が必要か
「加えるならば率いる人の情熱。トヨタらしさとは何か。物事は現場で起きている。そこに近い人が判断し決める力。私の思いと現実にギャップがある。トヨタは現場に近いところで判断され、決断されるべき。トップマネジメントはその体制を作っていく。社長就任後、現場に一番近い社長でありたいと言った。この8年、まだまだ現場との距離は遠いと思っている」
「現場に一番近い社長と言われる努力をしていく、トヨタマンのDNAは原価低減とTPS知らなかったらトヨタマンと言っちゃダメでしょうと」
「イノベーション、イノベーションなんて言っているからイノベーションが出てこない。トヨタはイミテーションから始めたのじゃないか。イミテーションから始めたのがトヨタ、それをインプルーブメントに変えた。改良を重ねて、結果的にイノベーションにつながってきた」
「最初はアメリカから車を買って分解し、日本の道にあう車、ランドクラウーザー、クラウン、ハイエースなど出てきたのがインプルーブメント時代。現在はハイブリッド、FCVにつながる」
「イノベーションと語っているのがトヨタの弱みになってきたのじゃないか。基本動作としてTPS、原価低減。イミテーション何が悪い、それが結果としてイノベーションにつながっていく」

・この記事の関連リンク

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トヨタ:決算説明資料






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