日経新聞、純利益63%減の37億円 買収したFTの評価が影響か
日本経済新聞社は3月30日、2016年12月期の有価証券報告書を公表した。
連結決算での純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は前期比63%減の37億円だった。
大幅な減益の要因は何か。
日経新聞は2015年11月にイギリスの高級紙フィナンシャル・タイムズ・グループ(FT)を約1600億円で買収している。
当初は暫定的に評価したFTの価値を確定した結果、2016年12月期の大幅減益につながった。
紙と電子版を含めた本業に大きな変わりはなく、当面は日経新聞グループの経営状況はFT次第となりそうだ。
ニュース目次・日経新聞の2016年12月期の決算
・2016年12月期の純利益は6割減
・2016年12月末の純資産は為替の影響で1割減
・メディア事業の減益はFT関連か
純利益6割減の主要因はFTの評価の確定の影響か
日経新聞の2016年12月期の連結決算は売上高が前期比18%減の3589億円、営業利益が38%減の99億円、経常利益が37%減の118億円、純利益が63%減の37億円だった。
一見すると、売上高は伸びたものの大幅な採算悪化だ。
この変化の主要因は2015年12月期に買収したFTだろう。
FTを連結決算に加えたことで、売上高は単純に加算され、利益は暫定的な会計処理から確定した金額への修正で悪化した。
日経新聞がFT買収時に生じた暫定的な「のれん」の金額は1,555億円だった。
2016年12月末において正確な取得原価の配分が完了し、修正後の「のれん」は1,241億円に変わる。
買収後に資産を精査し、「のれん」の金額のうち無形固定資産に398億円を振り替えた。
日経新聞は今回のFT買収での資産の扱いについて、のれんの定期償却期間は20年、無形固定資産の償却期間は3〜10年としている。
特定の資産を20年で費用にするよりも3年で費用にする方が最初の1年間での金額は大きくなる。
日経新聞の2016年12月期の大幅な減益はFT買収における資産の精査、償却期間の変更などが大きな要因だろう。
純資産は為替の影響で1割減
日経新聞の2016年12月末の純資産は前期比9%減の2740億円だ。
2016年12月期の純利益が63%減だといえ黒字は確保しており、利益が出ている限り通常は純資産は増える。
今回の決算で特徴的なのが「為替換算調整勘定」が2015年12月末のマイナス124億円からマイナス438億円への悪化だ。
日本企業が海外企業を買収した場合、円高が進行すると円換算で買収した企業の会計上の価値が下がってしまう。
その価値の下落を貸借対照表(BS)では為替換算調整勘定で表現する。
この純資産の減少は現金の流出とは関係ない。
日経新聞の場合、この為替換算調整勘定のマイナスが損益計算書(PL)に出てくるケースとしてはFTが2期連続赤字に陥るなど買収した会社の経営状況が悪化した時だ。
FTの直近のPLでは売上高が542億円、経常利益が18億円、純利益が14億円と堅調だ。
もっとも、FTの業績が悪化すれば「為替換算調整勘定」のマイナスが一気にPLに出てくる可能性がある。
メディア事業の減益はFT関連か、地域別売上高を公表
日経新聞は有価証券報告書で事業を「メディア・情報事業」と「その他の事業」の2つに分けている。
2016年12月期ではメディア事業の利益が前期比47%減の64億円、その他の事業が8%減の34億円だった。
メディア事業の大幅減益の理由はFT買収に伴うものだろう。
FT買収により海外事業の存在感が高まったため、2016年12月期には地域別の売上高の公表も始めた。
全体の売上高3589億円に対して日本が83%、英国が7%、米国が4%、その他が6%だった。
日本の大手メディアとして1600億円もの巨額買収を実施した日経新聞。
その正否を判断するにはまだまだ時間はかかりそうだ。