メタップス、深夜に決算発表 仮想通貨イーサリアムは価値5倍も時価評価せず
【メタップスの2017年9〜11月期の決算】
メタップス、深夜に決算発表 仮想通貨イーサリアムは価値5倍も時価評価せず
上場企業の決算にも仮想通貨の影響が及んできた。
東証マザーズに上場してスマホアプリの集客や分析などマーケティングや決済サービスを手がけるメタップスは1月15日の22時45分、2017年9〜11月期の決算を発表した。
売上高は前年同期比2.1倍の61億円、営業利益は99%減の200万円、最終損益は300万円の赤字(前年同期は約3億円の黒字)と採算面では苦戦した。
決算短信の発表は深夜になったうえ、監査法人の承認が必要な四半期報告書の提出は2月15日まで延長した。
決算の遅延のほか仮想通貨の取り扱いも注目を集めている。
発表した決算以上にメタップスが保有する仮想通貨の価値が今後の業績を大きく左右しそうだ。
ICOの調達資金はいったん資産と負債にして損益に反映せず、価値5倍のイーサリアムは時価評価しない
【メタップスの2017年9〜11月期の決算資料より】
メタップスは韓国の子会社が仮想通貨技術を使った資金調達(イニシャル・コイン・オファリング=ICO)を2017年9月26日から2017年10月10日を販売期間として実施した。
プラスコインというICOにより調達した資金は貸借対照表(BS=バランスシート)で資産側は無形資産、負債側は預り金と計上していったんは収益には反映させなかった。
メタップスはイーサリアム(ETH)をはじめとする仮想通貨を保有しているものの、四半期末時点では時価評価を行わず取得価格で評価したという。
メタップスはICO完了時には時価で10億円相当のイーサリアムを受理、価格は直近で約5倍になったと主張している。
メタップスの2017年11月末の貸借対照表(BS)では「その他の無形資産」は10億6400万円(前期は6億400万円)にすぎないため、直近の時価で評価すると会計上の数字よりも大きい資産になっている可能性がある。
メタップスの決算資料を分析すると実績である決算は大幅減益だったものの、仮想通貨イーサリアムの含み益がそれを補って余りある。
また、メタップスがICOで発行したプラスコインの自社保有分の簿価はゼロ円として認識している。
決算をチェックする監査法人と協議中としながらも、メタップスは「ICOにおいて受領した対価は収益として認識いたします」と説明している。
もっとも、仮想通貨の時価の変動は激しく一ヶ月も経てば上下の変動は1割や2割ですまないことも多い。
さらにメタップスは第1四半期報告書の提出延長の申請理由として、2017年末に韓国の仮想通貨取引所のハッキング事件において「監査法人からは、当該状況は、当社の連結財務諸表における仮想通貨残高の実在性に重要な誤謬の可能性があると説明を受けています」としている。
韓国で仮想通貨の取引禁止の法案が設立した場合、前受金として計上している仮想通貨は顧客への返還義務のある負債に変わる可能性もある。
(参考記事:韓国の仮想通貨取引所YouBitがハッキングで破産へ 大手のYoBitとは別)
上場企業がICOの実施や多額の仮想通貨を保有するとどうなるのか、投資家はどう評価すればいいのか。
メタップスはかつてない上場企業の事例として議論を巻き起こしている。