朝日新聞社、アベノミクス恩恵で不動産の含み益2647億円 過去5年の財務分析
朝日新聞社の財務諸表を分析、アベノミクスで不動産が好調
朝日新聞社の会社としての財務状況が話題だ。
紙の新聞が苦戦している一方、不動産事業が好調との認識が広まっている。
実際に2017年3月末の賃貸用の不動産の含み益は2647億円まで拡大した。
朝日新聞のメディア事業と不動産事業の利益の関係はどうなっているのか。
有価証券報告書で過去5年の財務状況を分析すると、金融緩和による資産価格の上昇というアベノミクスの恩恵が朝日新聞社に大きいことがわかる。
朝日新聞、不動産事業が収益の柱に
<表>朝日新聞社の過去5年の部門別利益(単位:百万円)
<グラフ>左軸:部門別利益、右軸:全体の利益に対する不動産事業の割合
「朝日新聞の不動産事業は好調ですね。この5年間では一貫して利益が伸びています」
「震災後のいわゆるアベノミクス、黒田日銀による大胆な金融緩和で不動産の業界は全体的に好景気が続いている。都心で優良物件を持つ朝日新聞社だけに不動産事業の好調は素直に理解できる」
「メディア事業の利益は変動が激しいですね」
「紙の新聞が苦しいのは誰が見ても明らかだ。スマホの普及で紙の新聞の優位性の持ち運びやすさも失われてしまった」
「ただ、配送人件費の合理化などを進めて採算改善の努力もしている」
「メディアの利益は落っこちた後に回復もしとるから、朝日が不動産だけで儲かってるだけとは言いにくいんやないやろか」
「じゃあ、利益というフローではなく資産というストックの観点からも朝日新聞社の状況を見てみよう」
賃貸用の不動産、含み益は2647億円まで大幅増
<表>朝日新聞社が保有する賃貸用の不動産の簿価と時価、その差額(単位:百万円)
<グラフ>
「これは有価証券報告書の注記にある賃貸等不動産の情報をまとめたものだ。賃貸用の不動産では簿価と時価の差額、いわゆる含み益が大幅に増加している」
「2017年3月末の不動産の含み益は2647億円!この4年間で含み益は85%増、来年には2倍になる勢いじゃないですか」
「実際には大型の不動産は簡単に売却しないため、あくまで会計上の参考数値だけどね」
「本社ビルとかもっと含み益があると思ったで」
「有価証券報告書に記載義務があるのはあくまで賃貸用の不動産だ。本来の業務に使っている本社ビルなどの時価に開示義務はない。実際はこれ以上の含み益を抱えている可能性は高いよ」
「新聞が売れなくても会社としての朝日新聞社の財務状況は盤石ということですね」
「間違った概念で使われる内部留保(利益剰余金)も2017年3月末は3080億円あるからね。朝日新聞が今、上場するならば不動産業の成長性を投資家に訴えるだろう」
「朝日が上場したら外資系ファンドに不採算部門のメディア事業を撤退して不動産事業に注力しろとか言われそうやで」
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