金融庁「長崎県に比べ隣県からのアクセスが悪い和歌山県」 人口減で23県は地銀の存続困難
【金融庁の有識者会議は23県で地銀単独でも不採算だと指摘した】
金融庁の有識者会議「長崎県に比べ隣県からのアクセスが悪い和歌山県」 人口減で23県は地銀の単独での存続が困難
金融庁が公正取引委員会の方針に反論、その資料で波紋が拡がっている。
金融庁が設置した外部有識者による「金融仲介の改善に向けた検討会議」は4月11日、地域金融の課題と競争のあり方に関する報告書を発表した。
地方では人口や事業所の減少により23県で地銀がシェア100%になっても不採算になると試算。
和歌山県や長崎県など23県では地銀の経営環境が厳しいと指摘した。
・地銀の経営環境が厳しい23県
青森、秋田、栃木、群馬、山梨、富山、石川、福井、岐阜、三重、奈良、和歌山
鳥取、島根、岡山、山口、香川、徳島、高知、佐賀、長崎、大分、宮崎
長崎県内の地銀の経営統合では公正取引委員会が「寡占で競争維持が不可能」とストップをかけている。
金融庁の有識者会議はこの公正取引委員会のやり方に反論した。
資料は和歌山県について「長崎県に比べ隣県からのアクセスが悪い」と指摘。
その和歌山県でさえ県外からの貸し出しが増えているため、県内のシェアで寡占を計るのはおかしいという例があげられた。
有識者会議の座長は成城大学社会イノベーション学部の村本孜教授で、歯に衣着せぬ物言いで有名な経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)などが参加している。
公正取引委員会「寡占で競争維持が不可能」に金融庁が真っ向から反論
【金融庁の有識者会議は公取の方針を名指しで批判】
長崎県の地銀では親和銀行を持つ「ふくおかフィナンシャルグループ」と「十八銀行」が経営統合を目指すも、公正取引委員会が「寡占で競争が維持できない」と計画を止めている。
一方、金融庁や日銀は地銀の経営の厳しさをたびたび指摘して経営統合を促すという逆の立場だ。
金融庁は公正取引委員会の方針に対して以下のように反論している。
〜地銀全体〜
・需要減少で地銀の市場支配力は歴史的に最も低い水準
・2016年度の決算では地域銀行(106行)の過半数の54行が本業赤字
・地銀は担保・保証しか見ていないため、寡占は関係なく規模の小さい企業の借入先の選択先は限定されている
〜長崎県(+和歌山県)〜
・県境を越えた貸出競争が激化している(和歌山県でさえ県外の貸し出しが増加)
・人口減少に店舗削減が追い付かず出店が過剰(長崎・佐世保は過剰度合いが高い)
・長崎県は地銀が1行単独であっても不採算
金融庁の有識者会議は地銀の経営状況の厳しさを分析したうえで長崎県地銀の親和銀行と十八銀行に言及。
「本件経営統合の是非を県内の貸出額シェアなどに基づいて事前に画一的に判断することは適切でない」と公正取引委員会の方針を否定した。
金融庁の有識者会議が公正取引委員会が経営統合に待ったをかけている案件を名指しで批判するのは異例中の異例。
株式市場でも話題になる案件だけに、今後の公正取引委員会の対応に注目が集まる。
・この記事の関連リンク
金融庁有識者会議:「地域金融の課題と競争のあり方」(平成30年4月11日公表)